もしも、もしも、ね。
「そりゃそうよね、万人に好かれるようなアンタだもんね!
自分のこと嫌う女なんて要らないわよね!!」
「暁里!!」
ふ、と名前を呼ばれ、体がびくんと跳ねた。
ゆっくりと視線だけ動かす。
ぎぎぎ、と音がしそうなぎこちない動きだったけど、
それでも篠田の向こうに人影を捕らえた。
どうして。
どうして、ここに望果と准君がいるの?
頭の片隅で疑問が過ぎった。
一瞬からだの動きは止まったけれど、
私の口は止まることなんてなかった。
「あんな嘘ついたのも、賭けを持ちかけたのも、
全部全部嫌いな私をこうやって陥れるためだったんでしょ?
それで、私が最低な女だから。
陸斗の話聞いてうんざりしたから、もういらなくなったんだ。」
最初から、最初から、分かってた。
そうよ、私が誰かに好かれることなんてなかった。
ずっと前からそうだった。
体育祭で盛り上がったり、
笑うことが増えたり、
教室にいることが多くなったり、
文化祭の準備がんばったり、
一人の影が四人に増えたり。
そんなの、全部嘘から生まれたことだった。
前から知ってたじゃない。
気付いてたじゃない。
嘘に終わりが来るなんて、当たり前。
ずっと、分かってたことだった。
でも。
「最低な嘘だよ。
やっぱりアンタは陸斗そっくりだ。
最悪の男だ。」
ねぇ、苦しいよ。ユウ。
理解出来たって、納得は出来ない。
だって嘘の私だったけど、嘘の関係だったけど、
楽しかったのは本当だった。
救われたのも本当だった。