もしも、もしも、ね。
―――望果が、そこにつなげようとしていることはなんとなく頭の片隅で分かってた。
私はこれでも勘のいいほうだから。
でも実際言われたらなんて言えば分からなくて、
もう痛くも無い眉間をもう一回撫でながら視線を落とした。
望果も落ち着かないのか、右手を撫でる行動を止めはしない。
それを見つめて私はゆっくり口を開いた。
「ユウの、おかげ・・・。」
呟いた言葉はただの反復だったけれど、私には結構重い言葉。
口にしてみればより私の胸に鉛を落としたように、その言葉はずしりと体に負担を掛けた。
「―――私、ユウのこと嫌いなの。」
その言葉は望果に話しかけた?
それとも、自分へ言い聞かせた?
望果が何か言いたそうに口を開くから、「嫌い」ともう一度呟いてみる。
口を閉じた望果の手は、もう動きを止めていた。
少しだけ、沈黙。
そして、一陣の風が吹いた。
「そう言って逃げるところは変わらないんだ。」
ざわめく木々の中、強く、重く、力のある、
いつもと全然違う低い声が、
世界を、裂いた。
私ははっと顔を上げる。
さっきまでの優しい微笑みはどこに行ったのやら、
望果が今までに無いくらい私を睨みつけていた。
少しだけ、ゾクリとする。
「そう言って、ずっと逃げて来たんだ。暁里。」
「・・・」
「裕哉君と出会ったときはそうだったかも知れない。
でも2年に上がって、偽物でも裕哉君と付き合うことになって、
いろんなことがあって、今日になって、
でも全部その言葉で片付けてきたんだ。これからも片付けちゃうんだ。」
「・・・望「暁里の馬鹿!!このバカリ!!」
バカリて。