もしも、もしも、ね。
ずっと思ってた。
私はなんのためにここにいるのだろうと。
私は一度答えを見つけた。
誰かのために、私はここにいるのだろうと。
―――当時の私にとっては、“陸斗のために、生まれてきたのだろう”と。
けれど、それを否定されて。
世界は色を無くした。
高校で分かれても、世界に色が戻ることなんてなかった。
本当は、立ち入り禁止の屋上の鍵を手に入れたのだって、
逃げたくなったら飛び降りようと思ったことがあったから。
世界から逃げたくなったから。
けれど弱虫な私はそんなこと出来なくて、
気付いたら空を見つめることが日課になっていた。
雲になりたい。
鳥になりたい。
自由にあの青空を飛べたら、どんなにいいだろう。
頭の片隅で、現実逃避だと分かっていた。
でも、私はそう思うしかなかった。
―――そんな私は、“いきて”いたけれど“生きて”いるつもりはなかった。
―――そんな私は、逃げてばかりで生き抜いてなんていなかった。
そんなある日、聞こえたの。
『私・・・先輩のことが、す・・・好きですっ!!』
それを覗き込んだあのとき。
あの瞬間、私の毎日は180度姿を変えて、
文句を言ってばかりだったけれど、
それでも世界が一瞬で色づいてキラキラ輝き出したんだ。
私が。
生きている。
前を向いている。
今までの私は、・・・無駄、なんかじゃない。
そう言ってくれる望果を見つめている私の頬を暖かい何かが伝った。
望果が、立ち上がる。
それから、涙を流しながらも笑ってるような泣いてるような怒ってるような不思議な表情をして、私に手を伸ばした。