もしも、もしも、ね。


「お前は馬鹿か。」



やっと口を開いた准君は、見下したようにそう言った。

ば、馬鹿って・・・。

あまり言われたことのない言葉に私は少しばかりぽかんとしてしまう。

(まぁ、不細工もあまり言われたこと無いけどね!)



「何ごちゃごちゃ考えてんだよ。

好きになっちゃいけねぇなんて誰が決めた?

過去とか、立場とか、理屈とか、そう言うの全部抜きにしてみて、」



准君は自分の親指で自分の胸を2回トントンと叩くように指した。



「ここが、アイツのこと好きだって思ったんだろ?

それ以上、何がいるってんだ。」



そんな准君の言葉に、ドクンと心臓が波打つ。

好き。

好き。

好き。

その言葉が、頭の中を一気に占めた。

私が、ユウを。



「ユウを・・・。」



突然私を恋人だなんて嘘ついたユウ。

体育祭。

文化祭。

いつも隣にいるようになって。

喧嘩して、

仲直りして、

ちょっと恥ずかしいようなことも話して、

怒って、

泣いて、

笑って、

いつも隣にいて、

いやなはずなのにそれが当たり前になっていて。

むかつくのも本当だった。

嫌いだったのも本当だった。

けれど、

嬉しくて、

楽しくて、

・・・思い出した過去に視界を暗くした私。

その手を引いてくれたユウは光だった。

あの背中に、私は何を思った?


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