もしも、もしも、ね。
*4*
***
「暁里、こないだの英語のノート貸して。」
「字、汚いよ?」
「別にいいよ。貸して。」
今度は同じ言葉と共にすいと彼は手を私に向けて出す。
私は机を開けて、よくある青い大学ノートを取り出した。
題名に英語、と書いてあるのは確認したが、もう一度ぱらぱらとページをめくる。
内容を見、そしてユウに渡す。
「はい。次の授業までなら返すのいつでもいいよ。」
そういえば、彼は「サンキュ。」と微笑んだ。
私の後ろにいた女の子達が「きゃぁっ!」と声を上げる。
ユウは私にも、そんな彼女達も気に止めず、すっと踵を返して自分の席に戻った。
席についた彼の横顔を、頬杖をつきながら横目で観察する。
さすが美形。
横顔も綺麗な上に、休み時間に机に向かうなんて真面目な姿も絵になる。
「うーん、どう思いますか?望果隊員。」
「いたって普通どおりッス、准隊長。」
ぼんやりしていると後ろからふざけた会話が聞こえてきた。
一瞬びっくりしたものの、すぐに犯人がわかって。
はぁ、とため息をついて振り返る。
「何やってんの、アンタたち。」
小難しい顔をしながら(無論演技)腕を組むバカップルが目に付いた。
二人は私を見ると、ニッと笑う。
「気付かれました、准隊員!」
「そうだ、気付かれたな望果隊長!」
「5秒で役柄変わってるし報告する内容でもないしっていうか分かってるし気付かれないほうがおかしいしそもそも何を突っ込んで欲しいわけ。」
そう言うと、望果が「暁里はご機嫌斜めなようです、准隊長!」なんて敬礼ポーズで言うもんだから、
“いい加減にしろ”という意味で笑顔を見せた。
途端にごめんなさい、と言う望果は私のことをよくわかっていると思う。