もしも、もしも、ね。
時間が、
空気が、
呼吸が、
すべてが止まったように思った。
ピタリ、と中途半端な格好のまま、思い切り目を見開いて固まる。
ゆっくりと、頭の中で反復し、
けれどやっぱり信じられなくて、「―――え?」と呟いた。
その声は細く掠れていて、電話が拾ったか分からないけれど、
彼の深呼吸する様子が伝わってすぐ、もう一度耳元で声がした。
『俺と、付き合って。』
待って。
待って。
落ち着け、私。
返事をする前に、私はぎゅっと目をつぶった。
思い出すの、今日あったことを。
私は彼を好きだと知った。
けれど、もう一つ知ったはずだ。
彼は。
ユウは。
私を、嫌っているはずだ。
陸斗のように。
「―――そんな真剣な声して。
どうせまた仮面彼女なんでしょ?」
想像以上に明るい声が出た。
不自然なくらい明るかったけど、空気を切り崩すには効果的で。
がくがくする手をぎゅっと握り締めて、私はまたベッドに正座した。
答えは、どっちを望んだわけでもなかった。
けれど、
『―――・・・あぁ』
肯定されると、なんとなく「やっぱり」という失望感が私を襲って。
でも否定されても、さっきの今じゃ100%信じることが出来なかったんだろうけど。