もしも、もしも、ね。


それから、私たちは初めて付き合った日のように至って平然と自分たちの設定を決めた。

別れたのは痴話喧嘩だったこと。

ユウの噂の1年生はただの噂だったこと。

(いや、これは本当にそうらしいけど。)

別れる日は、前付き合った日から3ヶ月で変わらず。

付き合いなおしたのに別れた理由はソリが合わなかったから。



そして、最後に彼は私に『あ、そうだ』と声を掛けた。

「ん?」と答えると、



『望果と准は知ってんの?俺らの関係。』



なんて言われて。

一瞬ドキンとした。

少し考えて、それから、



「―――知らない。陸斗関係で痴話喧嘩した、って言ったから。」



なんて、嘘をついた。

ユウは『なら平気か。じゃーな、また明日学校で』と追及することもなく電話を切った。

私の返事を待たない彼だったから、ツーツーと電話が途切れたことを知らせる音がむなしく響く。



どうして私嘘ついちゃったんだろう。



通話を切りながら、ぼんやりした頭で考える。

ユウが、もし望果と准君が事実を知ったと知ったら、

もう一度付き合ってくれただろうか?

面倒くさいことを嫌がる彼だ。

無かったことにしたんじゃないだろうか。

―――きっと、私は、もう一度掴んだ彼の隣にいるチャンスを失いたくなかったんだ。


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