もしも、もしも、ね。
「サッカー部のマネージャー。
俺にはよくわかんねぇけど、モテるらしいぜ。」
「へぇ・・・。」
「しかも超ミーハーグループの一員。
そんな奴が泣いて事情を話せば、ネズミ講式に噂は広まるだろ?」
サッカー部なら、先輩後輩層が広いからなおさらな。
そう言いながら、ユウはポケットから携帯を取り出した。
シルバーの折りたたみ式。黒いレザーのストラップが一本。
なんともシンプルだ。
「暁里、あんまり他学年のこと興味ないだろ?」
「興味ないわけじゃないけど、知らないのは認めるわよ。
学年やクラスメートのことすらよく知らないんだから。」
「だろうな。だから、アイツのことを知らないってのは読めてたよ。」
そう言って偉そうに笑う。
だけど、視線は携帯画面。
ボタンに乗る指は動き続けてる。
「だけど、たった15分でそこまで広がる?」
「そこは俺にとっても賭けだったな。ま、勝ったけど。」
なるほどね。そこがコイツにとっての“賭け”だったわけだ。
―――だめだ、完敗。
読みの深さが違いすぎ。
ま、私の情報と人脈不足はぬぐえないけど。
それでも、頭の良さを疑ってしまった自分を完全撤回。
やっぱ頭いいわ。この人。
「はい。」
「なに?」
突然差し出された携帯。
画面は、電話帳新規登録。
名前の所にはちゃっかり「桜野 暁里」と入っている。
「電話番号とメアド。入れて。」
「赤外線使えばいいじゃないの。」
「俺の、古い機種じゃないのについてないんだよな。」
・・・ホントだ。
少し確認してみたけど、確かになかった。