もしも、もしも、ね。
それから数分後。
ふ、と廊下が騒がしくなった気がして私は机から顔を上げた。
顔を上げるクラスメートがどんどん増えていくことを見ても、それは気のせいじゃないらしい。
実際そんなことを思っている間に段々とフェードインしてくる騒音は、
声が聞き取れるほどになっていた。
『待ちなさい、君!!』
『うっせー、用事があるんだよ!!』
どうやら人間は二人。
―――後者の声・・・聞き覚えがある気がしたのは気のせいなんだろうか。
いや、そんなはずあるわけない。
私は自分の予感を否定するように首を振って、
淡々と動じることなく授業を続けるおじいちゃん先生の声に耳を傾けようとした瞬間。
ガラッ
「アカリ!!」
勢いよくドアが開くと同時に、上げられた声は私の名前。
耳に馴染む声に、私は呆れ半分でゆっくりと顔を上げた。
さっき、聞こえた時点で分かってたもの。彼が誰かなんて。
聞いた過去が例え遠くても、脳が理解するには耳の記憶に残りすぎていた。
いや、そう言うほどでもないかな?
文化祭以来の、再会だ。
「―――うるさい、陸斗。」
不思議になるくらい落ち着いた声が出た。
声だけじゃなくて、心臓の鼓動も落ち着いてる。
望果の言葉でユウと共に陸斗のトラウマも乗り越えたんだろうか。
思わず苦笑してしまった。
「笑ってんじゃねぇ!」
ドアにもたれたまま陸斗は口を尖らせた。