もしも、もしも、ね。


そのとき、陸斗を追いかけていたらしい先生がドアまでやっと追いついて。

(生活指導の山本先生だ・・・もう退職間近なのにお疲れ様。)



「まったく、キミは何をしているのかね!

学校名と名前を言いなさい!!」

「あぁっ!?てめぇに答える筋合いはねぇよ。」

「なんだと!?」



生意気な口答えに、山本先生の顔は真っ赤に染まる。

陸斗の睨みと低音に竦みあがらないなんてさすが生活指導。

―――なんて考えてる余裕もなく、二人の喧嘩はヒートアップ。

耐え切れなくなった私は立ち上がった。



「先生、すいません。彼、私の知り合いで。」

「―――桜野・・・!?」



一応優等生で通ってる私。

まさかこんな見た目も口調も行動も最低な男の知り合いだなんて、先生からしてみればそりゃぁ驚きだろう。

目を見開いた先生に、自分の学校でのポジションを再認識して失笑した。

つかつかとドアに歩み寄り、陸斗と同じ側に立って先生に大きく頭を下げた。



「お騒がせして申し訳ありませんでした。」

「・・・いくら桜野でも、反省文は書いて貰うぞ。」



反省文だけで済むならいっか。

まったく人に迷惑かけて・・・と先生にばれない程度にため息をつきながら「はい」と大きく頷いた。



否、頷こうとした。


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