もしも、もしも、ね。
無言で「はい?」という意味を表現した私に「だってよ」と陸斗は言葉を続けた。
「この間はお前俺の顔を見やしなかったし、喋り方だってそんなに堂々としてなかっただろ?
なんていうか―――俺を怖がってた、っつーか。」
「あぁ、うん。本当に会いたくなかったし近づかないで欲しかったし。」
少し冷めた紅茶を飲みながらオブラートなしに答えると、陸斗はうな垂れそうになり、そして「ま、いっか。」と姿勢を立て直した。
「だから、その態度の変化的に、なんかあったかなーって思ったわけ。」
そう言って、陸斗はぐいっとカップに残っていたコーヒーを飲みきった。
私は無意味にマドラーでクルクルと紅茶をかき混ぜながら、「んー・・・」と考える。
“何かあった。”
それは間違いなく事実であり、その“何か”は間違いなくユウを好きだと気付いたことだろう。
そして気付いたことに伴う望果の、准君の、みぃの、想いを知ったことだろう。
―――でも、それと同時に、気付いたことがあった。
それは自分の心の中にだけ留めていて、まだ誰にも言ったことはなかったけれど。
「あのね、陸斗。」
「ん?」
私は大きく深呼吸をした。
それで、一瞬陸斗の目を真っ直ぐに見つめて、
「ごめんなさい。」
机におでこがつくんじゃないかっていうくらい、思い切り頭を下げた。