もしも、もしも、ね。


「だから、せめて私、これからは逃げるのを止めようと思ったの。

陸斗のこと、いいところも悪いところも忘れない。

私も、陸斗にしたすべてのことを忘れない。

辛いことや苦しいことや悲しいことは一杯あったけど。」



楽しい日々だって、あった。

心から、笑う日だってあった。

だから。



「私、きっと受け止められるって気付いた。

傷つくことから逃げ出さないで、傷ついたって覚えていたい。」



それは、私の強さに変わると思うから。

ううん、私の強さになったから。

だって、それが今の私なんだもん。

―――そうでしょう?望果。



「私、前を向いて歩くって決めたの。」

「・・・」

「あのね、陸斗。」



私は顔を上げた。

ねぇ、陸斗。

私ね、貴方には言いたいと思ったんだよ。



「私、好きな人が出来た。」



今はまだ、切ない思いしかないけれど。

私、貴方に胸を張ってこう言える人が出来たの。


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