もしも、もしも、ね。


私は、自分の番号とメアドを入れる。

不思議なほどに、違和感も感じず。

「サンキュー」と受け取って、なにやら登録作業。

その割には長いなぁ、と思って見ていたら、突然私のポケットが震えた。


開く。

すると知らないアドレスからメールが一通。

題名は「俺。」

番号が書いてある。

あぁ、ユウか。

目の前の人間だとはわかったけど、私はつい送り返した。



≪新手の俺俺詐欺ですか?≫



光を放ち、震える目の前の携帯。

私みたいに首を傾げて開いたユウがプッと吹き出した。

返ってくる返信。



≪メールの俺俺詐欺なんて、誰がだまされんだよ。

俺です、俺。篠田裕哉。≫



思ったより素直で、思わず顔が緩んだ。

顔を上げれば、やっぱり緩んだような微笑みでユウがこっちを見ている。



≪ユウ、ね。私は桜野暁里です。≫


≪わかってるっつーの。≫


≪ふつつか者ですが、仮面彼女をよろしくお願い致します。≫


≪こちらこそ、仮面彼氏をよろしくお願いします。≫



言いにくいことも、メールでなら言える。

隣の距離なのに、メールを使用するくらい私たちには距離があった。



「なんでメールなの。」

「お互い様だろ?」

「まぁね。」



始めたのは私だし。

私は電話帳に登録しようと、メニューボタンを押す。

電話帳登録・・・新規登録・・・そこまでしてグループに悩んだ。

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