もしも、もしも、ね。
私は無言で陸斗を睨んだ。
「―――お前、天然だから怖いよな。」
「はぁ?」
分からない言葉を言う陸斗に、私は首を傾げた。
陸斗は、こうやって昔から突然私に分からないことを言い出す人。
「ま、いっか。」
そう言ってむかつくぐらいサマになるポーズで肩を竦めると、
彼は「またな、暁里。」と手を上げた。
―――“また”。
その言葉の余韻に浸る私の返事なんて聞かず、陸斗はすぐに背を向けて歩き出す。
私は震える声を精一杯あげた。
「・・・ッ、またね、陸斗!!」
陸斗は振り返りもせず、ただひらりと片手を上げただけだった。
最後まで、格好つけなヤツ。
そう思って笑おうとするのに、少しだけ泣きそうになる。
メール出来たって。
電話出来たって。
もう会うことは偶然がなければきっとない。
―――ユウだけだと決めた私は、誘われても、会えないだろう。
貴方の背中、忘れない。
まだ覚えているけれど、この先もずっと忘れない。
ぎゅっと拳を握った私の鞄が震えた。
携帯だ。
軽く目を擦ってそれを取り出し、携帯を開く。