もしも、もしも、ね。
真っ先に向かった本屋さんで、ケーキの本を見比べる。
とはいえ初心者向けと書いてあるものでも私にはちんぷんかんぷん・・・どうしよ。
なんて思ってたとき、鞄に入れていた携帯電話が震えた。
メールだ・・・誰からだろう。
開いたら准君からだった。
From:佐久間 准
Subject:無題
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望果から聞いた。
アイツ、フルーツが好き。
それだけの文。
だけど、おかげさまで初心者向けの本の中でも『フルーツケーキ』が載ってるものに絞ることが出来て、
中でも写真が多くて注意点が細かく乗っている本を選んだ。
ターゲットは、フルーツロールケーキ。
生地をココアにすれば、少し甘さも押さえられるかな。
私はそれを買って、スーパーに向かいながら『ありがとう』と准君に返事を送った。
卵、砂糖、薄力粉、バター、中に入れるフルーツ、生クリーム・・・
何が家にあるか分からなかったし、
自分のお小遣いで作りたかったから、
作り方に乗っている素材と道具を片っ端から籠に放り込む。
練習代も含めれば痛い出費だけど・・・我慢我慢!
ユウへのクリスマスプレゼントはケーキ一本に絞るんだから。
これを渡して、ちゃんと好きです、って伝えるの。
―――ちょっと待って、振られたらどうするの?私。
振られた後に、手作りのケーキなんて渡せる?
じゃぁ告白する前・・・って、なんかそれはそれで重くない?
もしかして、ケーキって。
「選択ミス?」
スーパーのど真ん中。
籠の中身とにらめっこして、独り言。
そしてすぐに首を大きく左右に振った。
すぐにネガティブになっちゃ駄目だよ、自分!
大体今回はなんてったって望果のお墨付き。
心配することなんてないじゃない。
私は強引に一抹の不安を拭い去り、
変な人に見えるくらい胸を張って会計を済ませた。
大丈夫、大丈夫、大丈夫なんだから!!