もしも、もしも、ね。
*4*
***
そんなお母さんの厳しい特訓の成果もあり、2回に1回はまともになった一週間前。
まさかまさかでロールするのが難しく、なんとか形になった前日。
最終審査で、私はお父さんにケーキを食べて貰っていた。
まるで、入試の合格発表みたいな気分だ。
お父さんの喉がごくんと動くのと同時に、私もごくんと喉を鳴らす。
「うん、普通に美味しいよ」
「ホントッ!?」
私が机に手をついて身体を前に押し出しながら覗き込むと、
お父さんは「ホントホント」ともう一口食べながら微笑む。
私が「やった!」と両手を上げると、台所からお母さんが良かったわねと言ってくれた。
そして、「頑張ってたもの。」ともう一言付け加えてくれて、
タオルで手を拭きながらダイニングに現れる。
「―――それはそうと暁里?」
黙々とロールケーキを食べていたお父さんの声が鋭くなる。
けれど浮かれていた私は気付かず、「ん?」と首を傾げた。
「こんなに甘くないロールケーキを頑張って作って、一体誰にあげるのかな?」
あ・・・。
そこで私は気付く。
お父さんに言ってなかった!と。
「さぁて、私ラッピングでもしようかなー。」
「暁里、答えなさ「あーあーあー!!」
お父さんは優しくて家族を大切にしてくれるマイホームパパなんだけれど、
ちょっと過保護すぎてこまっちゃう人。
陸斗のときも言えなかったからなー、なんて懐かしいことを思い出す。
私は耳を両手で塞いで大声を出して聞こえないフリをしながら、台所に戻った。
「年頃なのよ」なんて含み笑いをしたお母さんのフォローの声と、
「暁里は渡さん!」というお父さんの声。
・・・私、何も聞こえない。