もしも、もしも、ね。
私は、道路の向こうにいる二人の姿をただ呆然と佇んで見つめていた。
女の子が、ユウの腕にゆるく自分の腕を絡ませて前に引っ張る。
ユウは一瞬驚いて、それからふわりと笑った。
・・・見たことも無いような、笑顔で。
私は、瞬きすら出来ない。
横顔でもその女の子の幸せそうな顔が分かって、
私の胸の奥がズキンと痛んだ。
誰がどう見たって、二人は仲の良いカップルとして完成していただった。
その姿は、行き交う人々の中に溶け込んで、
イブの夜、イルミネーションが輝く世界の中でとにかく自然だった。
私のケーキなんて努力や、嘘の彼女なんて入り込む隙のない、
一組の偽りない恋人が、そこにいた。
異常な空気をかもし出しているのはただ一人道の向こうを見つめて佇む私だけ。
ただただ心臓の音が煩くて、身体が動かない。
胸の奥が抉られてズキズキと鈍い痛みが走るのに、目が離せない。
そして穴が開くほど見つめているうちに、私は気付いた。
―――『じゃぁ、1年の“エリナ”とかいう女と付き合ってるっていうのは!!?』
みぃの言葉が頭を駆け抜けた。
エリナ、ちゃん。
その子を私は知っていた。
「誰よその女!」と望果に無理矢理1年の教室まで連れて行かれて、一度だけ見たことがあったのだ。
可愛らしい容姿と、雑誌から抜け出てきたように洗練された髪型、モデルのような体型。
一度見たら、その雰囲気とオーラは忘れられない。
今、ユウの隣にいるのは、エリナちゃんだった。
二人のかもし出す空気も自然だったが、
もっと自然だったのは二人のビジュアルだった。
美男美女。
こんなにも絵になる組み合わせがあるのだろうか。