もしも、もしも、ね。
『暇じゃないのに俺から誘うかよ。』
「そりゃそうだ。」
『大体、クリスマスは彼女といるもんだろ?』
―――この人は私の心臓を止めたいんですか?
また心臓をわしづかみにされてしまった。
胸だけじゃなくて、喉の奥まで苦しくなって声が出ない。
でも“彼女”が偽物って頭の奥で分かってるからほんのすこし切ない。
『で、場所なんだけど、俺決めていい?』
コクコクと電話の前で大きく頷く。
けれど、相手にわからないじゃないか、とはたと気付いてすぐに「うん」と決めた。
何やってんだ、私。
『ネバーランド。行こうか。』
「ネバーランドって・・・」
『ピーターパンじゃねぇよ?ほら、去年くらいに出来た遊園地。』
「あぁ。あれネバーランドって名前だったんだ。」
隣町に出来た遊園地は、確か去年大騒ぎになった気がする。
けれど行く予定もなかったし、
人ごみが嫌いな私は行きたくなかったから大して興味を持たなかった。
今でも人ごみは嫌い。
でも、ユウとなら・・・いいかも。
ううん、かもじゃない。
ユウとなら、何処にだって行きたい。
って、これじゃぁまるでほんとに恋愛漫画に出てくるようなただの恋する乙女じゃん。私。
『知らなかったの?』
「うん。」
『―――・・・ま、暁里らしいか。で、ネバーランドでもいい?』
「大丈夫。じゃぁ明日の待ち合わせは・・・」
『隣の駅の北口に、朝10時。』
「了解。」
波のように、またじわじわこみ上げてくる喜び。
デート。ユウと、デートが出来る。
『じゃ、また明日。』
そう言ったユウに「また明日ねッ!」と答えた自分の声はバカみたいに浮かれてた。