もしも、もしも、ね。
「ううん、なんでもない。」
「変なヤツ。」
「大きなお世話よ!」
ふんっといじけた振りをしてそっぽを向く。
ユウは「ったく。」なんて呆れた声を出すけど、その表情は笑っていて。
「行こうか?暁里。」
そう言って差し出したユウの手を取った。
ユウと手を繋いだのは、体育祭以来のことだった。
繋いだ手、このまま離れなければいいのに。
そう願って、私はちょっとだけ指先に力を込めた。
じんわり汗ばんだ手が妙に心地よくって、
そして私は夢の世界に、夢の時間に飛び込んだ。
そこで過ぎる時間はあまりにも楽しすぎて。
私は忘れていた。
夢は覚めるものだと。
ネバーランドなんて幻だと。
私達は大人ではないけれど、もう子供でもないことを。