もしも、もしも、ね。
「恵理奈。そうやって初対面の人にマシンガントークするくせ止めろって言ってるだろ。」
「だってぇー。本物のアカリ先輩に会うの初めてだけど初めてな気しなくて。」
「お前はよく聞いてるからだろうが。
暁里にとっては初対面なんだから少しは気ぃ使えよ。」
「もーッ!そうやっていっつも裕哉は私に冷たいんだからー。」
「冷たいんじゃなくて、教育的しつけだ。し・つ・け。」
目の前で繰り広げられる仲睦まじい会話。
ユウが、こんなに生き生きしてるの初めて見たかも知れない―――
そう思いつつ、裕哉の“癖”という言葉に、恵理奈さんの“いつも”という言葉に、
二人の仲を見せ付けられている気がして。
段々苦しくなっていくのが分かる。
私のことなんてそっちのけ。
憎らしいくらいお似合いで、悔しいくらい自然な二人の姿に息が詰まった。
もう、
もう見たくない―――ッ!!!
「わ、私なんかお邪魔みたいだね!ごめん、私も用事あったんだったわ先帰る!!」
泣きそうになった唇をぐっと噛んで、私は全力で笑う。
息継ぎする間もなく矢継ぎ早にそう言って、
ぽかん、とした様子の二人に「じゃぁねー!」と大きく手を振って、私は駆け出した。
背を向けて、逃げ出した。
だって耐えきれなかった。
もう一秒でも長くそこに居たら、泣いてしまう気がした。
ずっと我慢してきたものが、
築き上げてきたものが、
修復不可能になるくらい壊れてしまいそうで。
それが怖くて。
それが悲しくて。
「暁里!!」そう呼ぶユウの声なんて、聞こえないふりをした。