もしも、もしも、ね。
「暁里!!!」
痛いくらいの強い力で腕を捕まれて私の体はぐんと後ろに引っ張られた。
その声。
振り向かなくたって分かるよ。
「何よ。」
可愛くない私の受け答えに、声の主・・・ユウは少し乱れた息を整え、
そしてため息混じりに音を乗せて吐き出した。
「―――何泣いてんだ。」
「泣いてない!!」
そう叫んだ自分の声が分かりやすいほど鼻声だった。
か、格好悪い。
けれどプライドでせめて後ろだけは向かないようにぐっと力を入れた。
「何処行くんだよ。用事あるなんて嘘だろ?」
「―――嘘じゃない。」
「だったら、俺の目見ろよ。」
「はぁ?なんで見なきゃいけないわけ。アンタの目は嘘発見器だとでも言うわ・・・ッ!!」
私の言葉は遮られた。
だって。
だって、ユウが。
ユウが、回転させるように私の体をまた強い力で引いたから。
痛い、と抗議する間もなく、大きい手が私の両頬を挟む。
強引に上を向かせられて、切れ長の二つの黒曜石のような瞳に情けない顔の自分が写った。
「ほら、やっぱり泣いてる。」
「泣いてないったら!」
自分の視界が霞んでいるのを分かりつつ、精一杯私はユウを睨んだ。
瞬間に、感じたのは。