もしも、もしも、ね。
「じゃぁ、行きますよぉ!捕まってて下さいね。」
恵理奈ちゃんばっちりウインク。
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
「―――何です?まだ何か問題でも?」
まだ、も何もありすぎるわよ!!
私の文句に、恵理奈ちゃんは静かな顔をして振り返った。
その真っ直ぐ見据えた視線に、陸斗を感じてしまう。
兄妹って聞いた後だから、尚更。
「裕哉に言わないんですか?好きって。」
「!」
「逃げ出すんですか。散々回りをかき乱して、人に応援させまくっておいて。」
「・・・恵理、奈ちゃん・・・」
「兄に、何も言えず後悔したんじゃなかったんですか?」
恵理奈ちゃんの目が、近距離で真っ直ぐに私を射抜く。
この子は何処まで知っているんだろう。
突然の雰囲気の変わり方と、あまりに的を突いた言葉に、私は声が出なくなる。
戸惑う私をしばらくジーッと見て、そして彼女はにっこりとまた笑った。
「それじゃ、話は済みましたね? レッツゴーーーッ!!」
「ちょっとぉぉぉぉぉぉッ!」
それとこれとは話が違う!!
こうして私は誘拐された。
―――さっきまでのシリアスな雰囲気どこ行ったのよ!!