もしも、もしも、ね。
「も、もう1回やってみようよ。ね?」
3人だけになったところで、望果の提案。
うん、と重い腰を上げる私とユウ。
10メートルほどユウの後ろに回り、私はバトンを持った。
軽くジャンプしてから「行くよ。」で走り出す。
バトンを持つ手を伸ばす。
後ろ手のユウの手のひらにバトンを乗せる。
そして、バトン時の合い言葉。
渡したら「はい。」、受け取ったら「はい。」
「は「はい。」い・・・。」 カラーン
エンドレス。
何度やってもコレのエンドレス。
落ちた赤いバトンを拾っているとユウが戻ってきて私を睨んだ。
「お前手離すの早い。」
「逆でしょ?ユウが掴むの遅いのよ。」
「責任転嫁すんの?」
「そっちこそ、私のせいばっかりにしないでよ。」
「ねぇ、本当に2人付き合ってんの?」
「「付き合ってるよ!!」」
なぜか、こういう質問時に私まで即答するようになった。
嘘の付き合いが始まって3日。
恐ろしいことに、慣れていってしまってる私がここにいる。
相手が嫌いな人でよかった。
中途半端に嫌いじゃないと遠慮したりもしちゃう。
でも、嫌いだからこそ、こういう場面で物怖じせず好き勝手に言えるんだから。
「だいたい、バトンゾーンなのにユウ走るの速いのよ。」
「お前が合わせろよ。スピード勝負だろ、こういうのは。」
「だからって落としてたら元も子もないでしょ?」
「俺は前だから後ろ見えねぇの。お前が合わせなくてどうすんだよ。」
「思いやりのカケラもないってわけ?」
「ほらぁ、ちょっと二人とも喧嘩しないでよ~・・・」
「「してない!!」」