もしも、もしも、ね。
望果が仲裁してくれようとしたけど、私たちは声をそろえて拒否。
あまりにもそろった言葉に、彼女は肩をすくめる。
「まったく。気が合うんだか合わないんだかわかんないわね。」
「「合わない!!」」
「ほら。」
やっぱりそろってしまう声。
一瞬望果に向けた瞳は、また鋭いユウの視線に戻した。
「はぁ・・・暁里も裕哉君もさぁ、二人がバトンやるのってこれだけじゃないんだよ?」
困ったような望果の声。
そう。そうなのだ。
体育祭ラストのメインイベント。選抜リレー。
各クラスから男子2人、女子2人が選抜されるもの。
ちなみに走る順番は高1・高3・高2。
高3は受験勉強で練習時間が取れないから、高2がラストなんだって。
うちの学校大学付属でもないくせに、体育祭は10月だし、文化祭は11月。
そりゃ、受験生は大変だよね。
あぁ、来年のつらさが目に見えるようだわ・・・。
なーんてことは今回どうでもいい。
うちのクラスの選抜者は、女子が私と望果、男子がユウと佐久間准(さくま じゅん)君。
え?佐久間君?
彼は、遅刻とサボりの常習犯。成績は赤点が当たり前の問題児。
だけど、サッカーがすごくすごく上手。
そんな彼はサッカーを鼻にかけることもなくて、明るくて気さく。嫌いじゃない人。
ちなみに、今日はお休み。
なんでもサッカーの合宿があるとかないとか。(都選抜に入ってるんだって。)
選抜リレーも、男子と女子は交互。
順番は、望果・佐久間君・私・ユウ。
つまり、ここでも私からユウにバトンを渡すってわけ。
わかってる、けどさ・・・。