もしも、もしも、ね。
「おい、裕哉―。優しい兄貴が来てやったぞー。」
「「・・・」」
「あれ?もしかして俺お邪魔だった?」
なんとも説明しがたい。
キスする1秒前、くらいの距離まで縮まった瞬間、無遠慮に開かれた扉。
そしてなんとも言えない言葉がこの甘い空気を破った。
思わず二人して固まって凝視すると、彼はやっと気付いたのか頭を掻く。
無造作な黒髪と、少しつり上がった意志の強そうな瞳が印象的な人。
その後ろから「遅かったー」とか「空気読んでよ」なんて頭を抱えた陸斗と恵理奈ちゃんがやってくる。
え?え?っていうか・・・
「ユウの、お兄さん・・・?」
私が呆然とユウとその男性の顔を見比べていると、
ユウが満足げに笑い、陸斗が苦笑し、そしてその男性が肩を竦めた。
そのよくわからないリアクションに首を傾げる私。
「―――暁里、残念な種明かしだ。」
私から離れながらユウが口を開く。
種明かし?
頭にクエスチョンマークを飛ばしながらユウを見ていると、彼は私の頭をグワシと掴み、
強引にその男性に向けさせた。
「篠田竜哉(しのだ たつや)。俺の兄。
―――お前の、例の“初恋の男”だ。」
「――――――・・・は?」