もしも、もしも、ね。


「おい、裕哉―。優しい兄貴が来てやったぞー。」



「「・・・」」



「あれ?もしかして俺お邪魔だった?」



なんとも説明しがたい。

キスする1秒前、くらいの距離まで縮まった瞬間、無遠慮に開かれた扉。

そしてなんとも言えない言葉がこの甘い空気を破った。

思わず二人して固まって凝視すると、彼はやっと気付いたのか頭を掻く。

無造作な黒髪と、少しつり上がった意志の強そうな瞳が印象的な人。

その後ろから「遅かったー」とか「空気読んでよ」なんて頭を抱えた陸斗と恵理奈ちゃんがやってくる。

え?え?っていうか・・・



「ユウの、お兄さん・・・?」



私が呆然とユウとその男性の顔を見比べていると、

ユウが満足げに笑い、陸斗が苦笑し、そしてその男性が肩を竦めた。

そのよくわからないリアクションに首を傾げる私。



「―――暁里、残念な種明かしだ。」



私から離れながらユウが口を開く。

種明かし?

頭にクエスチョンマークを飛ばしながらユウを見ていると、彼は私の頭をグワシと掴み、

強引にその男性に向けさせた。



「篠田竜哉(しのだ たつや)。俺の兄。







―――お前の、例の“初恋の男”だ。」



「――――――・・・は?」


< 280 / 299 >

この作品をシェア

pagetop