もしも、もしも、ね。
永縁−エイエン−
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「ひどい話でしょ?最初の最初から裕哉は私のこと知っていただなんて。
私一人振り回されて、どぎまぎして本当に損した気分だったわ。
私、付き合った直後だったのに“本当にこの男でいいのかな?”なんて自問自答したくだいだったし。
しかも付き合ったら付き合ったで本当に俺様で傍若無人でマイペースで。
知ってたつもりでも、さすがに裏切られた気分だったわよ。
あんな男だなんて聞いてなかったわ。」
ストローでアイスティーをクルクル回す。
氷がカラコロと音を立てると同時に、溶けきっていなかったミルクがマーブル模様を描いて。
私の前に座る望果は「らしいけどねー。」なんて言って笑ってる。
准君は「よく喋るな、お前。」なんていいながら肩を竦めた。
望果はにやにやしながら机に頬杖を付き、身を乗り出すようにして私の顔を覗き込んだ。
「―――何?」
「いやぁ?
ずーっと暁里が教えてくれなかった裕哉君との付き合いだしたきっかけを今更喋るなんて。
一体どういう風の吹き回し?」
う・・・分かってるくせに。
相変わらず底意地の悪い望果の言葉に、少し顔が熱くなる。
「言えって言ったのそっちでしょ?」
「そうだけど。
まぁ、任せてよ!聞いたからにはばっちりいいもの作ってあげるって。
・・・准が。」
「俺か。」
望果の言葉にしっかり突っ込みつつ、准君の手元にはしっかり私の言葉がメモしてある。
「見せて」と手を伸ばすと、
准君は「読めるか?」なんていいながら私にそれを渡してくれた。
高校生の頃から変わらない汚い字。
けれどもう見慣れてしまえば読むことなんてたやすい。
ただ、上の題名だけは元々書いてあったのか、とても読みやすく綺麗な字で大きく書いてあった。
『篠田裕哉・暁里 愛の軌跡』