もしも、もしも、ね。


その紙はひょいと誰かの手によって取り上げられてしまった。

え?と思い顔を上げると、その人物は相変わらず硬い顔をしながらその紙を読み上げていて。



「中学生時代、裕哉、自分の兄に片思いしている少女にフォーリンラブ。

高校生時代、やっと会えたのに嫌われ、意地悪爆発裕哉君☆

・・・・・・随分なこと言ってるじゃねぇか、暁里?」

「ゆ、裕哉・・・ってそんなこと書いてあるの!?」



嘘でしょ!そう思いながら私は取り上げた人・・・裕哉の手から紙を奪い返す。

そして両手で掴んで穴が開くほど見つめながら読むと、

確かにふざけ半分な言葉の羅列が―――



「准君!!!」

「だってそれぐらいの方が面白くね?」



責めるように張本人の名前を怒鳴ると、頬杖付きながらあっけらかんと笑う根っからの楽観主義者がいて。

その嫁も楽観主義者なわけで、「見せてー」なんて能天気ににこにこ笑っている。

こ、この夫婦は・・・ッ!!!



「暁里、ちょっと詰めて。」

「あ、ごめん。」



怒りに震える私を冷静に引き戻すのはいつも裕哉。

私は我に返り、言葉の通りちょっと奥に詰めると彼は当たり前のように私の隣に座り、

そして「疲れたー」と言いながら右手でネクタイを緩めた。

そんな仕草にすらいまだときめいてしまう私も、

年を重ねるごとに色気も兼ね備えた裕哉を周りの女の子が見るこの光景が嫌な私も、

さすがに恥ずかしくて言えないんだけど。

裕哉はあたしを見てニッと笑うから・・・きっとばれてるんだろうなぁ。


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