もしも、もしも、ね。
「じゃ、じゃあさ!」
「何?まだ何かあんの?」
不愉快そうに私を見た裕哉だけど、
「どーぞ。」と言ってくれたから私は更に口を開いた。
「あの別れたときさ。」
「またそこか。」
「いいでしょ!・・・あのとき、どうして裕哉はわざわざ会ったときを思い出させたの?」
「―――あったなぁ、そんなことも。」
裕哉は思い出すように宙を見上げ、喉でクツクツと笑った。
「あれも、くだらない俺の独占欲。」
「意味わかんない。」
「知ってる?好意より悪意のほうが感情の力としては強いんだぜ?」
裕哉はそう言って口角を持ち上げてクエスチョンマークでいっぱいの私を見た。
「俺には俺の“嫌いな理由”があったはずなのに、お前がいつまでも陸斗陸斗っつーから、
ちょーっと腹たってな。
ついでに、俺への悪意で俺の印象さらに強烈になれば一石二鳥かなって思っただけ。」
「はぁー?」
「大体、俺にとっては初恋の女とのファーストコンタクトで思い出の瞬間だったのに、
お前があまりにも怒ってるから俺結構ショックでさ。
そんな第一印象を忘れるなんて許さねぇ、っていう俺からの怒りでもあったわけ。」
こうやって聞くと、なんだか少しだけ恥ずかしくなる。
私はもう自分のことだけでいっぱいいっぱいで、裕哉の気持ちなんてまったく考えてなかった。
そんな幼い自分と、裕哉の思いになんだか居たたまれない。
私はそれを隠すように「それとね!」と続けた。
裕哉は「まだあんの?」と呆れたように言いながら、それでも話を聞いてくれる。
「クリスマスにデートしたの覚えてる?」
「あぁ、あの最後の日な。」
「あの前日に、恵理奈ちゃんと二人で出かけてたでしょ。」