もしも、もしも、ね。


私が尋ねると、裕哉はぽかんと目も口も開けて立ち止まり、

「・・・は?」と私を見て固まった。

私も一緒になって立ち止まり、「あれ、何しに行ったの?」と問いかける。

裕哉は思い出すように頭を捻り、それからまた歩き出す。

唐突に歩き出した彼の背を小走りで追いかけて隣に並ぶと、

裕哉は思いもしないことを言った。



「俺、恵理奈と二人で出かけたことなんてないけど。」

「でも私見たよ?二人で歩いてるとこ。だから私二人が付き合ってるんだって―――」

「そのとき俺は暁里と付き合ってることになってたんだから、わざわざ学校で変な噂になるようなことはしねぇよ。

それに、ましてや恵理奈とは一度噂になって、それを消そうとしてたんだから紛らわしいことはしないって。」



た、確かに。

裕哉の理屈は筋が通っている。

それに嘘はついていない・・・はず。

―――じゃぁ、私が見たあの裕哉はなんだったの?



「まさか。・・・まさかだけどな、暁里。」

「え?」

「お前、俺と兄貴見間違えたとかじゃねぇよな?」



そ、そんなこと!



「―――ないとは言い切れない。」



だって距離あったし、私も動揺してたし。

見間違いしてない、なんて自信もって言えない・・・。

正直に答えると、裕哉ははぁと肩を落とした。



「結局また兄貴かよ。」

「ご、ごめん!だって裕哉にお兄ちゃんがいるとか当時知らなかったし・・・!!」


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