もしも、もしも、ね。
冷や汗たらたらで身を潜めていると、女の子の次の声が聞こえた。
「イエスかノーでいいんです!好きな人や恋人はいらっしゃるんですか?」
「・・・」
意外と、ばれてない・・・のかな?
私はおずおずと体を戻し覗き込む。
女の子はより篠田に詰め寄っていた。
篠田ー。後ろ壁で逃げ場ないわよー。
「教えてください!そうしたら私先輩のことを諦めますから!!」
なに、その交換条件。
ポジティブどころか駆け引きに出たか。
強引で支離滅裂な話題転換に、思わず私まで顔をしかめた。
多少同情する。
「アレ。」
そしてしばらくの間の後、篠田の声。
「アレ」って・・・指示語、だよね?
ん?なんで私、篠田と目が合ってるの?
私は彼より上にいて、さっきまで二人の頭のてっぺんしか見えてなかったのに。
あ、女の子の方もこっちを向いた。
篠田の右手の人差し指がスッと立ち上がって、その爪の先と私の視線がこんにちは。
「アレ、俺の彼女。」
「・・・は?」
はぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?