もしも、もしも、ね。

け、計算かと疑いたくなるような角度・・・

むかつくけど気にくわないけどアンタの顔綺麗なんだから無駄に近づくな!!



「どうした?」



ユウの声がどこか遠くで響いた。

だって、今、すごく近かったんだもん。

ユウが立つ前より立った後の方が近かったんだもん。

体操着から見える、筋肉質な腕。でも室内競技だからそこまで焼けてなくて。

それが私に触れた。

低い体温と固い肌にびっくりした。



「・・・べ、別に・・・。」



私、赤くなってないよね。

そう思ってユウを見るが、ユウは「変な奴」と笑ってたから多分平気なんだな。




そういえば、私ユウに触れたことがない。

襟を捕まれたとか、手を伸ばされたとか。

顔を覗き込まれたとか、携帯を取り上げられたとか。

近い節は何度か思い当たりはあるけど、触れたことは一度もなかった。


そう、こんなさりげない触れ方すら―――




「いつまで立ってんだよ。」

「別にッ。」

「って、今度は怒ってるわけ?」

「そんなことないし。何言ってんの?」



恥ずかしさで、つんとした態度しかとれなかった。

触れた恥ずかしさじゃない。

こんな小さなことを気にしてしまった自分が恥ずかしかったんだ。

たぶん。ね。

とりあえず、私は結構最初よりかなり離れたところに腰を下ろす。

触れた腕が、ユウに近い側のその腕が、なんだかまだ熱かった。


すると、ユウは「お前わけわかんない」と苦笑した。

私だってわけわかんない。

なんであんたなんかにこんな気持ち持たなきゃいけないのか。



気にする必要なんてないじゃん。

だって相手はあのユウだよ?呼び方で言ったら「元:篠田」だよ?

あの、大嫌いな―――



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