もしも、もしも、ね。


ユウは手を組むと、空に向かってソレを伸ばす。

気持ちよさそうな伸び。



「ま、やっぱりやってみるか。」

「そうする?」

「スピード落としてやってみようぜ。そしたら原因わかるかもしれねーし。」



そう言ってユウは「よっ」と立ち上がる。



「ん。」

「は?」



目の前に差し出された手。

え?何これ。私は驚いて彼を見上げた。



「ほら、立つだろ?」



あぁ、立たせてくれるのか。

そうは思ったけど。



目の前の手を見つめる。

私よりずっと大きな手。太いけど、長いからなんとなく細くも見える指。

骨張ってゴツゴツしてる。手首にはボロボロになったミサンガ。

あの筋肉質な腕とバランスが良くって・・・。



って!!

わ、私何考えてるのよっ!!!



「怪我してないし、子供じゃないし。」



その手に触れることもなく立ち上がる。

払いたかったけど、払うためにはやっぱり触れなきゃだめだから。

変な思考だって分かってるけど、

こんなもやもやした気持ちのまま、小さなことでも彼に触れたくなかった。



「だよな。」



私の気持ちを知らないユウは、屈託なく笑った。

その微笑みが太陽を背景になんだか眩しかった。




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