もしも、もしも、ね。
ユウの手前でスピードを緩める。
バトンを持つ手を伸ばして、ユウの手に置く。
ポンって音。皮膚とバトンがぶつかる音。
ユウの指が動いた。
バトンを掴むんだ。
「は「はい。」い・・・」 カラーン
成果、なし。
肩を落としながらしゃがみ込むと、上からため息混じりの声が聞こえた。
「だからさ、なんでそんな離すの早いわけ?」
「・・・そう、かな。私ちゃんと手に乗っけてるの確認してるよ?」
今回ははっきり違うって言えなかった。
ユウのせいだ、って責められなかった。
―――自覚が、あったの。
ユウの指が動いた瞬間、急に呼吸がしにくくなって喉がクッと詰まる衝動が起きて、
スッと手を離してたから。
今回は、絶対に私のせい。
「俺が掴むのまで確認しろよ。」
「うん・・・。」
私の気持ちをわかってくれてるのか、わかってないのか知らないけど。
ユウは小さく笑ってくれた。
私の目の前に転がるバトンを「よ」と拾い上げながら、
ユウは続けて口を開いた。
「別に、そんなにあせる必要ないっしょ?」
「そう、なんだけどさ・・・。」
「なんか理由あんの?」
「特にない。」
自分でもらしくないくらい、小さくて消え入りそうな声。
申し訳なさとか、悔しさとか。この気持ちが意味分からなくてもやもやしてる。