もしも、もしも、ね。


「あーかーりー。」

「なーにー・・・?」



沈む私を気遣うように名前を呼んでくれる。

でもやっぱり声のテンションが変わんなくって。

そうしたら、クスクスとユウは声を出して笑った。



「お前、バカだわ。」

「なっ!!!」



何ソレ!!

私は驚きとむっとしたのとで急いで顔を上げた。

すると、細くなったユウの目と私の目がぶつかる。



「なんだ、顔上げれんじゃん。」

「え?」

「バカに反応するなんてさっすが暁里。」



悪戯っ気を含んだ声音と笑み。



「バカが今何の関係あるのよ。」

「だってバカだろ? 気にしなくていいこと気にしてんだから。」

「っていうか、私自身も何を気にしてるかわけわかんないんですけど。」



ユウはわかるっていうの?

ジトッと睨めば、ユウは一瞬目を見開いて、それから手で口を押さえた。

何よ、その反応。

そんなに言いたくないことでもあるっていうわけ?

ユウは視線を揺らした後、ため息と一緒にその手をはずす。



「今日はもういいよ。また明日やろうぜ。」



すごい早口でそう言ったかと思えば、私の承認なくユウは歩き出す。

私の横を歩いて通り過ぎながら手に持つバトンでユウは私の頭を叩いた。

ポンポンって軽い音が耳音で響く。

また、バトンを渡すときの衝動が胸を焦がした。



ねぇ、ユウ。何なのよ、これ。

痛くないのに痛いよ。

叩かれたところがね、熱持ったみたいにジンジンするんだよ―――


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