もしも、もしも、ね。


「で?」

「うん。」

「で、それから練習してんのに、今だ成功してないと。」

「うん。」

「理由が今だ思い当たらないと。」

「うん。」

「明日もう本番だってわかってる?」

「・・・うん。」



机の上に、どたっと力無く頭を落とす私。

振り返る形で、同じ机に頬杖を付く望果。

あれから毎日朝も昼も放課後も、私とユウは練習してる。

けど、一回も成功しなくて。


なんで?

バトンを渡すだけなんて、小学生でも出来る簡単なことじゃん。


そう思えば、罪悪感とか責任感、申し訳なさにイライラが加わる。


なぜなにどーして?

私、なんで手離しちゃうんだろう。反射的なんですけど、アレ。


そう、原因は毎回私が手を離すのが早いこと。

どうして離しちゃうかの理由がわかんない。



「あと、練習のチャンス、今日の放課後だけだよ?」

「・・・うん。」



ため息をして、そして望果の声。すごい真剣な声音。

わかってる。わかってるわよ、そんなこと。

今は終礼待ちの休み時間だもん。



「―――ね、暁里。」

「んー?」

「嫌だとは思うから提案なんだけどさ、やっぱり、順番変える?」

「どうしよっかなぁ・・・」



今までは「いい」ってきっぱり断ってた。

でも、ここまで来るとついつい悩んじゃう。


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