もしも、もしも、ね。
「あのね、クラスリレーの順番なんだけど。」
「あー・・・変えんの?」
望果が話題を切り出せば、ユウは頭を掻きながらあっさりと中心を付いた。
わけがわからない佐久間君は「え?どこを?」なんて言ってる。
それに「私と暁里入れかえんの。」と望果が説明した。
「クラスリレーだけ?」
「うん、一応ね。」
「じゃ、選抜はそのままなんだ。」
「うーん・・・明日寸前で変えることになるかもだけど。」
動揺した素振りもないユウ。
体育委員として事務的な望果。
その会話を聞いていると、突然ユウの視線が私を見た。
「暁里はそれでいいわけ?」
「―――うん。」
「そっか。」
ユウはそれ以上突っ込んでこなかった。
それが、私は逆に怖かった。
心の中では呆れているの?
出来ない出来ないって言ってるばかりで、原因をいつまでも見つけられない私。
原因が見つからなくて出来ないからって、最後は逃げてしまった私を。
「じゃ、今日の放課後は新しい順番でやってみよ。」
「あぁ。どこ集合?」
「爺さんの前。」
「了解。後でな。」
爺さんって言うのは、校庭を囲むように並ぶ木の中で、角にある大木。
大きいのにどこかよぼよぼしていて、
白髪みたいに薄い緑色の細くて少ない葉が髪の毛みたいだって。
皺みたいに木の表面には線がいっぱい。
怒鳴る口のような、大きな穴が生徒のちょうど目の高さぐらいにある。
だから私たちはみんな「爺さん」って呼ぶ。
いつから呼ばれ始めたかは知らないけど、先輩達からずーっとそうなんだって。
私たちから離れていくユウを見ながら、突然佐久間君が「めずらし。」と呟いた。