もしも、もしも、ね。
*2*
***
「あー、雨でも降ってくれないかなぁ。」
「出た、非体育祭民。」
本日何度目になるかわからない呟きに、隣に座る佐久間君がつっこんだ。
目の前では「それいけ!サザエさん!」という高一の競技が開催中。
アンパンマンの題名なのに、モットーは「サザエさん一家のように息を合わせよう。」
挙げ句、BGMはタッチ。
うーん、私よりこっちに突っ込んで欲しい。
「そんなに体育祭嫌なの?」
「んー、結構。」
ちなみにここは、入場門の前。次がクラスリレーなんだもん。
え?それで、なんで私が佐久間君と一緒かって?
だって、始まるまでは誰かと喋ってたいけど、
望果は体育委員で大忙しだからギリギリまでここに来ない。
んでもって結局ユウとはもやもやしっぱなしだから。それだけ。
ちらりと視線を後ろに向ける。
「えー、体育着姿の裕哉マジかっこいいんだけどー。」
「ばぁか、普段でも見てるじゃん。」
「なんで応援団やんなかったの?裕哉の長ラン見たかったのにぃ。」
「ねぇ、裕哉ぁ。」
「裕哉ぁ。」
「裕哉ぁ。」
・・・。
火の粉のように飛んでくるピンクや赤のハートを手で払い、私は視線を前に戻した。
ま、わかって頂けると思うが、あの通りユウはハーレム状態。
女の子に囲まれて、アイツは満足してんじゃない?
「裕哉のあの姿見んの久しぶりだね。」
「え?」
「だって、桜野と付き合い出してからは見てねぇもん。俺。」
「ってことで、何かあったっしょ?」と彼は首を傾げた。