もしも、もしも、ね。


「お。」と嬉しそうに顔を上げた佐久間君は嬉しそうに唇を舌で舐める。



「頑張ろうな。」

「よろしくね。」



最後にそんな言葉を交わして、私たちは整列位置につく。

ちらりと。

本当にちらりと、一瞬ユウと目があった。

反らされてしまったけど。

そして遠くから望果が走ってきて「滑り込みー。」なんて列に入ってた。



『選手、入場。』



放送の声で、一気に列が動き出す。

練習では「軽い駆け足で~」とか「手はどうのこうの~」とか言ってたけど、

ぶっちゃけ守ってる人はいやしない。

ちなみに、このクラスリレー。

1周200メートルの校庭を四分割、一人50メートルずつを走る。

最後のアンカーだけは半周分、100メートルなんだけどね。



ざわざわとしていた声。

ゆっくりフェードアウトするように、静かになって、

スタート選手(うちのクラスは佐久間君。彼2回走るの。)がスタートラインに立った。



「位置について」



始まったら、もう替えは効かない。

結局、逃げちゃったな。私。



「用意」



ごめんね、望果。ごめんね、佐久間君。

わがままして。迷惑かけて。

本当に、ごめんなさい。



「ドンッ!!」 バァンッ



逃げて、目を反らして、諦めて、ごめんね。

ごめんなさい、ユウ。

貴方の冷たい目、あわせられない瞳。私のせいだね―――


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