もしも、もしも、ね。


始まっちゃえば、あっという間。

私は小さく乱れる息を整えながら、楽々一位でゴールテープを切るユウを見た。

盛り上がる赤組。

泣いて抱き合って喜び合ううちのクラス。

ユウは中心にいて、もみくちゃにされながら笑顔を振りまいてた。


だけど、私は参加することができなくて。


もし、ユウにバトンを渡せてたら、私も喜べてたかな。



「お疲れさん。」

「望果。」



輪から外れて駆け寄ってきてくれたのは、望果。

楽しそうにVサインして、私の目をじっと見つめる。



「かっこよかったよー、暁里も。」

「冗談。望果の方がかっこよかったよ。お疲れ様。」



私はにっこり微笑んだけど、望果はむぅっと頬を膨らませた。



「喜びが足りーんっ!!」

「いっ!!」



突然頬をバチンと押さえ込まれ、思わず変な声を上げる。



「やだぁ、暁里ったら変な声。」

「望果のせいでしょうが。」

「あはは、確かにね。」



『結果をお伝えします。1位、赤組。』



急に流れ出した放送。

1位の告知に、赤組はまたワァッと声を上げた。

「ばんざーいっ!」と望果は私の両手首を掴んで上に上げる。

二人で手を繋いだままの、ばんざい。


みんなの声や笑顔があんまりにも嬉しそうだったから、

私一人のもやもやくらいいいかなって思って。

結局、結果よければみんなも嬉しいんだなって思って。

二回目は、私も一緒に「ばんざーいっ!」って叫んだ。

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