もしも、もしも、ね。
退場するときに、望果は仕事だって本部のテントに戻っちゃったから、
私は一人で生徒席に戻った。
それから、また淡々と目の前では競技が行われてるわけですが。
で、隣には相も変わらず。
「なんで隣来るの。」
「宮崎に“暁里を一人にしないでね”って頼まれたから。」
望果の言葉を妙にリアルに再現する佐久間君。
私の白い目を感じ取ったのか「引かないでー。」と彼は必死に私の腕を引いた。
「つーか、次騎馬戦じゃない。なんで佐久間君ここにいるの?」
「いやぁ、俺もやりたいのは山々なんだけどさぁ。」
「なんか理由あるの?」
そう尋ねれば、悔しそうに頬を掻く佐久間君。
聞いちゃいけなかったのかと思い不安になっていれば、彼がゆっくり口を開いた。
「ま、理由はいろいろあるんだけどさ。
練習にあんま出れないとか、うちのクラスの人数が4で割ると一人多いとか。
でも、一番の理由は―――」
「理由、は?」
「怪我をさせたり、自分がしたら困るから。」
「はぁ?」
あぁ、私今絶対顔崩した。
「俺中学の騎馬戦でさ、不可抗力だったんだけど人の足踏みつけちゃったんだよね。
それで相手足の骨折れちゃってさ。」
「あらら・・・そっか、サッカーやってるから。」
「そー。脚力がどうやら強めなんだよねぇ。
俺、中学からっしょ?だから、先生達から出場禁止命令ー。」
こんなところで説明するのもどうかと思うけど、補足しとくね。
実は、私たちの高校は中学からエスカレーターで上がってこれるの。
実際そんな子が学年の7割。佐久間君もユウも望果もその“7割”に入ってる。
私は“3割”。高校からなんだ。
「ま、俺ももうすぐ試合近いし、怪我できねぇもん。
出れなくてちょうどいいってことで。」