もしも、もしも、ね。


退場するときに、望果は仕事だって本部のテントに戻っちゃったから、

私は一人で生徒席に戻った。

それから、また淡々と目の前では競技が行われてるわけですが。

で、隣には相も変わらず。



「なんで隣来るの。」

「宮崎に“暁里を一人にしないでね”って頼まれたから。」



望果の言葉を妙にリアルに再現する佐久間君。

私の白い目を感じ取ったのか「引かないでー。」と彼は必死に私の腕を引いた。



「つーか、次騎馬戦じゃない。なんで佐久間君ここにいるの?」

「いやぁ、俺もやりたいのは山々なんだけどさぁ。」

「なんか理由あるの?」



そう尋ねれば、悔しそうに頬を掻く佐久間君。

聞いちゃいけなかったのかと思い不安になっていれば、彼がゆっくり口を開いた。



「ま、理由はいろいろあるんだけどさ。

練習にあんま出れないとか、うちのクラスの人数が4で割ると一人多いとか。

でも、一番の理由は―――」

「理由、は?」

「怪我をさせたり、自分がしたら困るから。」

「はぁ?」



あぁ、私今絶対顔崩した。



「俺中学の騎馬戦でさ、不可抗力だったんだけど人の足踏みつけちゃったんだよね。

それで相手足の骨折れちゃってさ。」

「あらら・・・そっか、サッカーやってるから。」

「そー。脚力がどうやら強めなんだよねぇ。

俺、中学からっしょ?だから、先生達から出場禁止命令ー。」



こんなところで説明するのもどうかと思うけど、補足しとくね。

実は、私たちの高校は中学からエスカレーターで上がってこれるの。

実際そんな子が学年の7割。佐久間君もユウも望果もその“7割”に入ってる。

私は“3割”。高校からなんだ。



「ま、俺ももうすぐ試合近いし、怪我できねぇもん。

出れなくてちょうどいいってことで。」


< 47 / 299 >

この作品をシェア

pagetop