もしも、もしも、ね。
ソフトクリームや雪兎の形をした雲がゆっくりと流れてる。
爽やかな秋風がほほを撫でる。
コンクリートの冷たさが、セーター越しに伝わる。
うん、感覚は確か。気持ちいい。
気持ちいいけど、これは夢だ。悪夢だ。
私は自分に必死に言い聞かせて目を瞑った。
早く夢から覚めよう。
早く現実に戻ろう。
夢でも、ただのその場しのぎの嘘でも、篠田なんかの彼女になる前に。
篠田が夢に出てきただけでもまっぴらごめんだというのに、
どうして彼女なんかになれようか。
落ち着け、私。
鍵を閉めたんだから、アイツは入って来れるはずない。
時間はゆっくりある。
ゆっくり、現実の世界に戻ればいい。
覚めて。覚めて。覚めて覚めて覚めて!!
「おい。」
「うわぁっ!!!」
突然かかった声に、私は驚きの言葉を叫んで起きあがった。
すぐ近くに、篠田の顔。
コイツは、息を切らしながらも「何やってんだ」と呆れてた。