もしも、もしも、ね。
***
「暁里っ!!?」
「あ、望果・・・。あれ?仕事は?」
「いーのいーの。お昼くらいないとやってらんないわよぉ。」
顔を洗って泣き顔を消してから生徒席に戻った私を出迎えたのは、望果。
走ってきた元の席には、見慣れた赤いお弁当箱。
口元についたご飯粒を取れば、「ごめん先食べ始めちゃった」と笑った。
それから急に表情が変わって、今度は望果が私の顔に手を伸ばす。
「暁里、どうした?泣いた?」
「あ、わかる?」
「んー・・・なんとなくだけど。 もしかして、裕哉君絡み?」
あっというまにドンピシャなことを言う望果にちょっと驚いて。
表情からそれを読みとったらしい望果が、人差し指を立てて私の眉間に突きつけた。
「見た目は大人!頭脳は子供!その名は名探偵モカ!!」
「いや、見た目大人で頭脳子供はただのバカだから。」
「ありゃりゃ。なんだ、ココの回転はいつも通りなんだね。」
私に突きつけていた人差し指は、“ココ”すなわち頭に方向転換。
「ま、別になんてことはなくてさ。
裕哉君がちょっと沈んだ顔だったから、そうかなって。」
今は、准君がどっかで尋問中。
そう言ってから、望果は「とりあえず座ろ。」と私の腕を引いた。
沈んでた?ユウが?なんで?
驚きと疑問に呑まれていた私は、望果の腕のままに座らせられる。
そして彼女は「よし」と気合いを入れながら、
かわいらしい容姿に似つかわしくない堂々としたあぐらをかいた。