もしも、もしも、ね。


「話せるトコだけでいいからさ、話してみ?」

「でも―――」

「言っておくけど、私の口はダイヤより硬いし、脳の皺は100歳越したおばあちゃんより多いわよ。」



はっきりと自信満々に断言する望果。

私は「何ソレ。」と小さく笑った。

望果の言っていることはいつも妙な的の射方で面白い。

でもさ、



「私たち“オトモダチ”、でしょ?」



そんな笑顔と一緒に言われたら、言い方がどうなんて関係ない。

断れるわけないじゃない。



「望果くらいよ。まったく。」



他の人なら、私が先に立ち回って話さないようにするっていうのに。

ほんと望果くらい。

私より、立ち回りが早いのは。



「お褒めにあずかり光栄。」

「別にそこまで褒めてないんだけどな。」

「なんて言わずにさ。ほらほら!」



望果は私に早くしろとでも言うように急かす。

仕方ないか。



「あのね―――」



私はお弁当と一緒に一連のことを話す。



騎馬戦の時に、クラスメートが「勝ったらキスする」って言ったこと。

決勝戦でユウがわざと負けたこと。

追及したらそれを認めたこと。

キスを私は気にしてなかったのに、ユウは気にしていたこと。

だから、負けたのは私のせいだと思っていること。

応援していたクラスメートに申し訳ないこと。

頑張っていたクラスメートにあわせる顔がないっていうこと。

悔しくて、悲しくて、リレーの件と積み重なってもやもやしてること。


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