もしも、もしも、ね。
「え?ちょ・・・!!なんで入ってこれるの!?」
鍵を閉めたはずなのに。
ここは立入禁止のはずなのに。
私はわけがわからなくて、ただブンブンと腕を振りながらドアを指さした。
顔だって、きっと目も口もぽかんと開けられてるんだろうな。
だけど私のリアクションに篠田が動揺するわけなんてなくて。
「答えなんて一つだろ」と言って、手の中のものを見せてくれた。
ちりん、と金属がふれあう音がなる。
「合い鍵・・・。」
「たぶん、桜野と同じ理由。」
篠田の口角がいたずら調子に小さく上がった。
そんな表情も様になっていて、私は小さく「う」と唸る。
「覗きに立ち聞き。立入禁止の場所に侵入。
“学校始まって以来の優等生”がやることじゃないな。
桜野暁里(さくらの あかり)サン?」
嫌みったらしいったらない。
こういうところが気にくわないのよね。
クールなのはオーラだけで、よく喋るし毒舌だし。
私は悟られない程度に一瞬顔を歪めてから、
表情を戻してふんと鼻で笑ってみせる。
「人聞きの悪いこと言わないでくれる?
同罪だってやってるじゃない。
人気者の篠田裕哉クン?」
ツンとした態度で臨む。
こういうのは、引いた方が負けだ。