もしも、もしも、ね。


わずか。僅差。

けれど、それでも肉眼ではっきり順位が分かった。



『1位 青組、2位 赤組!!!』



放送に呆然とした。

あと数メートルあったら、絶対抜いていたのに。

ユウ、抜けなかった。


喜びに泣く青組の声を聞きながら、私と望果、准君は静かにユウに近づいた。

ユウは膝に手をついて息を整えていて。

私たちに気づくと顔を上げて小さく笑った。



「わり。抜けなかった。」



その目が光って見えたのは汗のせい?それとも悔し泣き?

なんだか何も言えなくなって、体操着の裾をぎゅっと掴んだ。



「暁里。」

「・・・な、に?」

「バトンできたじゃん。偉い偉い。」



ポンポンと頭を叩かれた瞬間、喉の奥が暑くなって。

胸の奥から何かがはい上がるように呼吸がしにくくなって。

唇を噛んだのに、なぜか目から雫がこぼれた。

体が震えて、俯いた。


勝てなかったのが、悔しい。

「負い目があるから」っていうのがリレーを頑張った動機で、

それは少し不純だけど、

それでも最後は「みんなで勝ちたい」って思った。

勝ちたかったよ。

思い出作りたかった。涙じゃなくて、笑顔の思い出。


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