もしも、もしも、ね。
だけど、実際に行ったら・・・。
「だって望果!!私はね、みんなに気に入ってもらえるものを選びたかったの。」
「はいはい、耳タコ。
でも裕哉君は、いっぱいあるんだから二手に分かれて早く帰ろうって言ったんでしょ?」
「そう!!」
質を選びたかった私に対し、ユウは時間を選んで。
それで大喧嘩(冒頭に戻る)。
質の反意語は量なのに・・・なんてツッコミも1ミリくらいあるけど、
でも喧嘩は100キロくらい。
1ミリと100キロは雲泥の差、ノミと象!!
「望果は私の気持ち分かってくれるでしょ?」
「わかるけど裕哉君の気持ちもわかるわよ。
結局どっちもどっちよね。喧嘩の内容がくだらない。」
それを言われちゃおしまい。
「大体、結果論として二人揃って手ぶらで帰ってきといて、
私のなんのフォローが必要だって言うの?」
普段はかわいい望果の笑顔が怖い。
痛い。
ダイヤモンドダストに肩をすくめて、私は手短にあった布を手に取った。
「これスタッフルーム用ののれん代わり?」
「そ。じゃ、暁里、それ縫っててくれる?」
「はーい。手縫いでいいのよね?」
「お願いします。」
ちなみに望果も何かを縫っている。
腕時計のように手首に針刺しをつけて黙々と縫う姿はまるで職人。
私はその針刺しから一本針を取って、近くに転がってた白い糸を通した。