もしも、もしも、ね。
(たぶん)赤くなった顔を見られたくなくて、私は思いきりユウの肩を押した。
そのまま、くるりと体ごとそっぽを向く。
保健室の椅子が回転することに感謝。
「そういう意味じゃねーっての。」
わかってるよ。
所詮、嘘の彼氏彼女なんだから。そんなことは百も承知。
でも仕方ないじゃん。恥ずかしいんだから。
「暁里?」
「・・・。」
「悪かったって。今も。買い出しんときも。」
・・・つーか、買い出しの時は、私も悪いトコあったし。
頬を触る。
よし、冷めてるな。たぶん。
私はくるっとユウの方に体を向けた。
「いーよ。」
「ホント?」
「うん。っていうか、私の方こそ―――」
ごめんね。
その言葉は、ガラリと空いた保健室のドアの音で遮られた。
「あ、裕哉ぁッ。見ーっけ。」
ハートを飛ばした声と共に表れた女の子。
茶色いくるくるした髪にばっちりメイク。
その子は私なんて眼中にない様子で、ユウの腕に自分の腕を絡めた。
「裕哉ぁ、探したんだよぉ?」
「・・・美香ちゃん。あのさ、―――」
美香ちゃん?何?女の子名前呼びにしてるの初めて聞いたんですけど。
「一応俺、彼女のま―――」
「買い出しッ。一緒に行くって約束したでしょぉ?」
ユウの声を遮って放たれた言葉に、私はビシィッと固まった。