もしも、もしも、ね。
*2*
ユウは、それから数十分後に帰ってきた。
手にはいっぱいの荷物を持ってる。・・・荒川さんは何も持っていないのに。
その二人を見て、望果やなっち、ともちゃんが目を見開いたのがわかった。
そしてぐるりと首を回して私に視線を投げて来たけど、思いきり無視。
「裕哉、ありがとぉ。美香ばっか楽してごめんね?」
「美香ちゃん女の子なんだし、重いの持たせられないって。」
段々と、それでも確実に他の人の視線が私に集まってくるのが分かる。
私は気にしてないつもりなのに(つもり?違う違う、気にしてないの!)、
どうしてか針に糸が通らない。(視線のせい?・・・そうよ、視線のせいよ!!)
「みぃ、お帰りー。」
「裕哉とデートなんてマジ羨ましいんだけど!」
荒川さんの取り巻きが一斉に彼女を迎え入れる。
ちらりと見れば、荒川さんはあっと言う間にみんなの渦の中心。
「えへへー」と笑う彼女は・・・たぶん世間的に言って“かわいい”子なのだろうな。
正直、私は茶髪の子は皆同じに見えるんだけど。
「宮崎さん!」
「・・・何?」
荒川さんは、「よいしょ」なんてかわいい声を出してさっきまでユウが持ってたビニール袋を両手で抱えると、
とてとてと望果の所へ走ってきた。
望果の声には棘がある。
自惚れじゃなければ、それは、私の(嘘だけど)彼氏と一緒にいるから。
「はい!今日裕哉と桜野さんが買ってくるはずだったものだよぉ。」
私のセンスだけどいいかな?
彼女は両手を合わせて、上目で望果を見た。
女の子相手にも上目遣いするんだ、と少し呆れてつきそうになるため息を必死に飲み込む。
それにしても、不必要な形容詞があるんだけどな。(え?嫌味?嫌味なの?)
望果は引きつった顔のまま私を見た。私は苦笑して頷く。
「・・・・・・・・・どーも。」
しっかりと間を空けて、望果はそれを受け取った。
ちらりと中を見る。
白地にピンクのハートマークの布や、ふわふわのボンボン。
キラキラのリボン、風船。
私とユウじゃ絶対に買わないだろうかわいらしいものがそこに溢れかえっていた。