もしも、もしも、ね。
***
「ということで、コスプレ決めをしたいと思いまーす!」
「何が“ということで”か意味わかりませーん!」
「はい、却下ー!」
クラスメートの誰かの声。教壇でにっこりと笑う望果。
お願いだから、会話のキャッチボールを成り立たせて欲しい。
なんて私の心の声が聞こえるはずもなく、彼女は更に口を開く。
「リクエスト形式はめんどくさいんでー、アミダで決めますー。」
そう言うと、後ろでなっちとともちゃんが巨大な模造紙を張り出した。
数えるのも面倒くさいが、たぶんクラス全員分の棒があるんだろう。
あ、もちろんだけど下の端は折ってある。
「上に名前を書いてください。
それじゃぁ、教室の四隅の人きりーつ!」
どうやら、じゃんけんをして一番目に勝った人から二番目に勝った人の方向に順番が回って行くらしい。
斜めになったらどうするのよ、なんて私の危惧は置いておいて、
上手く行ったことに廊下側から縦に回っていくことになった。
最後の方か、なんて思いながら私は欠伸を一つ。
浮かび涙でぼやける中に見える教室は和気藹々としていて随分と楽しそう。
ついでに、私の周りの席の人たちは最後の方のことを悔やんでいるけれど、
正直アミダで最初も最後もないと思う。
ましてやこの本数なんだから。
「やだね、最後の方なんて。」
後ろの席の子(確か渡部さん?)に肩を叩かれ振り返るとそう話題を振られた。
否定するわけにも行かず愛想笑いしながら「来るまで暇よね。」と返し、私は体を元に戻す。
特にすることもない私は、ぼーっとしながら時間つぶしに目の前の人の波を見つめていた。
―――あ、ユウだ。
あの喧嘩(もどき?)から数日が経った。
表面上一緒に帰ったり、ご飯を一緒に食べたりしてるけど。
なんとなく一線を引いているというか壁があるというか・・・お互いにぎこちない。
否、私が引いてるからそういう風に感じるだけかもしれないけれど。