もしも、もしも、ね。
隣に名前を書くのかな?なにやら二人で指さして話すユウと荒川さん。
荒川さんが背伸びしながら先に名前を書いて、ユウにペンを渡す。
・・・って、望果が話掛けた?
何て言っているかは、教室のざわめきに消されてる。
望果は見惚れそうな程綺麗な笑顔。
荒川さんは困ったような怒ってるような眉間に皺を寄せた顔してユウと望果の顔を交互に見つめて。
ユウはきょとんとした後しばらく考える素振りを見せて。
そして彼のペンが進んだ先は・・・荒川さんの隣じゃなかった。
荒川さんが膨れて望果を睨んでいるところと、
ユウが荒川さんに片手の手刀で謝っているところを見ると、
望果の言葉でユウが書くところを変えたのは一目瞭然だった。
「次の列ー!」
なっちが叫んでまた一列動く。
あと二列か。
他のクラスメート達は話さないわけじゃないけど特別仲がいいわけでもない。
特に興味の対象も無くなった私は窓の外に目を送った。
11月、か。
もう落ち葉の季節じゃない。
葉の落ちきった、寒い木々は乾いた冷たい風の中で揺れている。
親近感が沸くのは・・・なんでだろうか。
私は、寒かろうが景色が綺麗じゃなかろうが、
秋から冬のこの移り変わりの季節が一番好きだ。
それから数分後、私たちの列の番。
よっこいしょ、なんておばさん臭い言葉を内心呟いて前に行く。
「ほい」とちょっとばかりふざけた口調で順番にペンを配るのは望果。
私も受取ろうと手のひらを上に手を彼女に伸ばした。
けれど。